生前贈与 注意点は?
5月25日付け中日新聞に掲載されていました、「くらしとお金の相談室」の記事をご紹介させていただきます。
質問
「生前贈与」について教えてください。成人した子ども2人に財産を移していこうと考えています。税金の仕組みや、贈与をする上で気を付ける点を教えてほしいです。
財産把握し必要か判断
答え
生前贈与とは、相続税の節税を目的に、自分が亡くなる前に財産を他者に贈ることです。
相手は主に子どもや孫ですが、家族以外でも構いません。
近年、注目が高まっていますが、まずは、そもそも生前贈与がなぜ必要なのか、知っておく必要があります。
亡くなった時点で所有していた財産は「相続財産」となり、法律で定められた相続人、または遺言書で指定された受取人(受遺者)が引き継ぎます。
相続財産には一定の金額を超えると、「相続税」がかかります。
生前贈与は、あらかじめ子や孫に財産を渡し、相続財産を減らすことで、相続税の負担を減らすためのもの。
生前贈与をするべき人とは、相続税の申告が必要な人です。
具体的に見ていきましょう。
相続財産には、現金や有価証券、土地といった「プラスの財産」のほか、生命保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」、借金などの「マイナスの財産」が含まれます。
プラスの財産とみなし財産から、マイナスの財産を引いた分が「正味の相続財産」。
ここから基礎控除を引いた金額に、税金がかかります。
つまり、相続財産が基礎控除額を下回るなら、相続税はかかりません。
基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の人数)。例えば、相続人が配偶者、子2人の計3人の場合、3000万円+600万円×3人=4800万円となります。
まずは自分の財産を把握し、相続税の申告が必要になりそうか確かめましょう。
国税庁のホームページにある「相続税の申告要否判定コーナー」を活用すると、おおよそその財産の金額を基に申告が必要かどうか分かります。
ちなみに、相続税が課税される人の割合は死亡者数全体の1割ほどです。
実際に生前贈与をする上では、いくつか注意点があります。
贈与した財産には贈与税がかかりますが、受け取る人1人あたり年間110万円までは非課税です。
この仕組みを使い、毎年少しずつ財産を移していく方法を「暦年贈与」と言います。
贈与する際は、相手や日にち、金額が明確になるよう、銀行口座を通じて行いましょう。
この時、受け取る側が普段使っている口座に振り込むことが重要です。
例えば、子や孫の名義の口座でも、贈与者が通帳などを管理していると、子や孫は現金を自由に使えないため、贈与と見なされません。
税務調査で指摘されることになります。
今後、生前贈与を検討している人は、まずは「終活」も兼ねて自分の財産を把握するところから始めるといいでしょう。
財産を書き出しておくことで、亡くなった後に残された家族が財産の把握に苦労したり、遺産分割でもめたりするのを防ぐことにもなります。
相続財産への加算期間延長
税制改正で来年1月から、贈与税を巡るルールが変わります。
暦年贈与をする場合、現行は相続開始(死亡)前の3年以内に贈与した分は、相続財産に加算されるというルールがあります。
亡くなる直前の「駆け込み贈与」を防ぐためです。
来年からはこの加算期間が7年以内に延びます。
贈与税にはほかに「相続時精算課税」という仕組みもあります。
こちらは累計2500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる一方で、相続時にそれまでの贈与分を相続財産に加算するというものです。
暦年贈与との選択制で相続時精算課税を選ぶ場合は、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日に税務署への届け出が必要です。
来年からは、相続時精算課税にも年110万円までの基礎控除が新設されます。
※詳しくは、税務署、税理士・会計士の先生など、専門家にお尋ねください。
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