所有権界と筆界に関する紛争解決
首都圏への人口の一極集中に伴い、不動産の有効活用が叫ばれています。特に都心では、不動産有効活用の一環として、収益物件や商業施設を建設する光景はよく見られます。このような開発案件で特に重要なことは、隣地との境界を確定させておくことです。なぜなら、建物が境界を越境していることが判明すれば、隣地所有者から損害賠償請求をされたり、建築の差し止め請求をされたり、建物の解体・撤去を命じられたりする可能性があるからです。
1.境界の概念
・所有権界と筆界
「境界」という言葉は、「所有権界」と「筆界」の両方を含む概念です。「所有権界」とは、その土地に関する所有権が及ぶ範囲を画するための私的な存在としての境界のことをいいます。
一方で「筆界」とは、土地と土地の地番境を示す公的な存在としての境界のことをいいます。所有権界によって区切られた土地ごとに地番が付され、当該地番が公図上表示されることによって、地番境としての筆界が成立するに至ったという経緯があるため、本来であれば所有権界と筆界は一致するはずです。しかし、所有権界と筆界の不一致は、しばしば生じています。
2.境界紛争を解決するための手続き
・手続きの種類
境界紛争が生じた場合の解決手法としては、①境界に関する合意、②土地家屋調査士会によるADR、③筆界特定制度、④訴訟があります。
3.筆界を確定するための証拠資料について
訴訟においては自らの主張が正当であることを証拠によって立証しなければなりません。
(1)図面
筆界を明らかにするためにまず調査すべきものは、公的な機関が管理している図面です。特に、法務局に備え付けられている、①登記記録(登記簿)、②法14条地図、③公図、④土地所在図などの各種図面、➄地積測量図、⑥建物図面、⑦土地台帳等については、必ず確認しましょう。また、法務局以外にも、都道府県または市区町村の道路局など、さまざまな公的機関をあたり、入手できる公的な図面は、集められるだけ集めましょう。
(2)境界標
また、現地の境界標も重要な資料です。境界標には公的なものと、私的なものがありますが、境界確定に重要なのは公的な境界標です。
4.境界確定の手法
(1)筆界確定の一例
次に、集めた資料を読み解き、筆界を確定することとなります。
(2)原子筆界の単位
近代的所有権の成立以前は、「土地の所持」という概念があり、明治政府は土地の所持者に、土地の所有権を認めました。土地に地番が付され、地番が公図上表示され、かかる地番境が筆界として成立しました。どのような単位で行っていたかというと、農村部では主に「反」という単位を用いました。
都市部も昔は田畑ばかりでしたから、筆界が問題となっている係争地も、一反の土地と一反の土地が隣り合っていた地域であるということはあります。そのため隣地所有者との間で筆界に関する認識の相違がある場合は、公図や昔の航空写真等を見て、一反の土地が隣り合っていた地域かを確認する必要があります。
(3)基点の確定
そして、このような一反の土地は、何らかの点を基点にして順番に一反ずつの土地として区切った経緯があります。このような基点は、道路や河川などの公共物であることがほとんどです。民有地と官有地の境には、公的な境界標があるのが通常ですので、かかる境界標を基点として一反ずつ土地を区切ると、係争地の筆界までたどり着くこととなります。このようにして表示された筆界が、裁判所の認定すべき筆界であるということになります。
なかなか測量する機会も少ないため、境界に関しては、知らない間に隣地に出てしまっていることがあります。
外構や家をリフォームする際などに、測量の先生に見てもらうのも良いかもしれません。
お持ちの不動産を何かしらしようかな。とお考えでしたら、是非、お気軽にご相談ください。
今回は、土地売却などのご相談をされる方々から、境界について問題が生じていることが時々ありますので、KINZAIの雑誌から、境界についての記事の一部を掲載させていただきました。参考にしていただき、気になることがございましたら、お尋ねください。
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