遺言は、相続手続きの円滑化になるだけではなく、ご自身の老後設計や、ご自身の想いを伝える手段としても重要な役割を果たします。

　遺言があれば、相続人が遺産分割協議の負担から解放され、故人の意思に沿って手続きを進めることができます。

一方、遺言がない場合、相続人同士の話し合いが必要になるため、紛争に発展することもあります。

最近では、遺産分割の合意ができないまま、紛争になることもなく、相続財産が放置されている事案も増えています。争うような家族ではないことは、遺言を用意しない理由にはなりません。

　遺言は被相続人の思いを反映した相続分配を実現する方法です。

法定相続分にとらわれないで、今までの感謝の気持ちを伝えたい個人や団体に財産を残すことも可能です。

疎遠な親族に財産を渡したくない場合でも、遺言を通じて被相続人の意思を尊重してもらえます。

この場合は、法定相続人が最低限相続できる割合の「遺留分」を侵害することがないよう注意しましょう。

　さらに、遺言作成は、自分の財産を確認したり、老後資金や財産管理について考えるきっかけにもなります。

例えば、認知症になった場合に備えて、「任意後見契約」や「家族信託契約」を結んでおくことで、ご自身の信頼できる人に、あなたの生活や財産を守ってもらうことができます。

　遺言は、単なる相続対策ではありません。

ご自身の人生を振り返ってみて、感謝すべき相手を思いつつ、未来のための「終活」の一環として捉えることができるのです。

遺言を作成することで、自分自身の価値観や人生観を再確認し、残された時間をより豊かに過ごすためのものになることでしょう。