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多様化する高齢者向け資金スキーム

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多様化する高齢者向け資金スキーム

老後2000万円問題で顕現した長生きリスク

 

 老後2000万円問題が突き付けたように、これからは「長生きリスク」への対策が不可欠となります。昭和中期を振り返ると、「終身雇用制度」「年功序列型賃金」を背景に高度経済成長を成し遂げ、会社員の給与は右肩上がりで上昇し、公的年金は比較的高い水準で維持され、退職金も保証されていました。要するに、将来に対する見通しが非常に立てやすい経済環境にあったのです。

 

 それが一変したのがバブル崩壊です。さらに、グローバル経済の進展によって雇用を取り巻く環境は一変しました。少子高齢化による人口構成の偏在に伴い、社会保障制度の持続可能性が揺らぎ出したのです。相互扶助と社会連帯による生活保障というセーフティネットがその機能を失い始め、自らの生活を自己責任・自助努力によって築き上げなければならなくなりました。

老後生活を保障するはずの公的年金だけでは暮らせず、「生涯のうちで2000万円不足する」と突然言われたら、動揺・困惑するのは無理もありません。

誰もが生涯現役で生きられる健康長寿社会の実現を切望する中、自立した生活が送れない不安は「長生きリスク」となって、我々の国民生活を脅かすようになりました。

 

 

リバースモーゲージの活用

 

 こうした世相を反映してか、近年、住宅金融に高齢者支援を意識した動きが目立ち始めました。その先鞭役となったのがリバースモーゲージでしょう。

リバースモーゲージとはリタイア後、預貯金と年金収入だけでは一定の生活水準を維持したままセカンドライフを送ることが困難と感じたとき、自宅を担保に金融機関から借り入れ、生活資金に充てることでゆとりある老後を過ごそうというシニア向けの融資です。

 

 日本の持ち家率は平均61.2%(2018年度住宅・土地統計調査)ですが、世帯主年齢別に見ると、高齢者ほど持ち家率は高い傾向にあります。

実際、60歳以上では7割超がマイホームを所有しています。そこで、自宅を単なる中古の不動産で終わらせず、金融資産として再評価・資金融通する仕組みがリバースモーゲージなのです。

 

 年齢を重ねるほど、生活環境の変化には順応しにくくなるので、自宅を手放すことなく生活資金を確保できる魅力があります。その上、毎月の支払いは利息のみで、元本の返済は借入者が死亡したときに一括で行います。

融資資金の使途は生活費に限定されず、レジャー、自宅のリフォーム、住み替え、さらには老人ホームの入居費用など、幅広い使い道が認められています。

高齢者の自宅有効活用に新たな道を切り開いたと言っても過言ではないでしょう。

 

 

リースバックは借入金への対応になるか

 

 しかし、デメリットもあります。

リバースモーゲージは中古住宅の担保価値を再評価するところから始まります。そのため、金融機関による評価額の高低により融資の認否結果が異なるのです。一般的な傾向として、融資対象になりやすいのは郊外より都心立地の住宅、築後物件より築浅の物件、マンションより一戸建てといった特徴があります。

つまり、誰もが手軽に利用できる制度ではないのです。加えて、定年間際あるいはリタイア後に再度、借金することに抵抗を感じる人も少なからずいるでしょう。

老後に再びローン返済を始めるという自覚と覚悟が求められます。

 

 そうした中、「リースパック」という手法に注目が集まっています。マイホームを売却して所有権は譲渡するものの、同時に建物賃貸借契約を締結して借家権を取得するのです。引き続き自宅に住み続けながら、毎月の家賃の支払いと引き換えにまとまった資金(売却代金)を手にできる仕組みです。

 

 この資金はリバースモーゲージと異なり、借入金ではなく全て自己名義の現金です。当然、返済義務はなく、資金の使途にも制限はありません。一部は家賃返済の原資にするのが賢明でしょう。

さらに、換金性が低いという特性を有する不動産を遺産分割する際、できるだけ均等に相続財産を分配できるよう、マイホーム(相続財産)を現金化しておくための手段として活用する手があるため、相続対策にも有効です。

 

 

売却代金が残高を下回っても差異の返済不要

 

 最後、同じく相続対策として住宅金融支援機構などで取り扱っているノンリコース型ローンの活用方法をご紹介します。

リバースモーゲージに話は戻るのですが、相続の発生に伴い、自宅を担保に借りた融資金(残高)をその自宅を売却して相殺する場合、例えば残高が1000万円、売却代金が1500万円とした場合、差額の500万円は相続人が受け取れます。他方、同じく残高は1000万円、売却代金が800万円だとすると、本来、不足の200万円は相続人が負担しなければなりません。ところが、ノンリコース型のリバースモーゲージ(住宅融資保険付き)の場合、差損の200万円は免責され、返済不要になるのです。

 

 このように、高齢者の自宅を裏付けとした資金スキームは多様化しており、長生きリスクの軽減に一役買っています。

上手に有効活用すれば自宅はお金に生まれ変わり、『脱・公的年金への依存』が可能になるわけです。

誰もが健康で幸せな老後生活を送れるよう、自己防衛の術を身に付けておくと安心です。

 

                                    (KINNZAIより)

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