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不動産の明け渡し交渉続き

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不動産の明け渡し交渉続き

 前回の不動産の明け渡し交渉の続きを、一部抜粋して紹介させていただきます。

 

立ち退き交渉において注意すべき点

 

(1)誰が交渉を行うべきか

 

 立ち退き交渉をするにあたって、a)賃借人が自分自身で行うという方法と、b)弁護士に依頼するという2つの方法があります。賃借人が自分自身で行えば、弁護士費用がかからないため、費用面から考えればa)の方がよいといえるでしょう。

 

 しかし、賃貸人は、立ち退き交渉のプロではないことが通常でしょうから、不適切な進め方をしてしまう事例が数多くあります。賃貸人としては、自分自身の物件のことなので、最初は冷静でも次第に感情的になってしまうということがよくあります。例えば、賃貸人が賃借人の事情を全く考慮しないで立ち退きを一方的に迫り、両者間の信頼関係が完全に破壊されてしまう等の事例があります。これは、おそらく賃貸人が「返してくれといったら契約は終了する」と思っているからではないかと思います。しかし、「返してくれ」といっただけでは契約は終了しないのが借地借家法の世界です。このような認識の相違により、賃貸人と賃借人との信頼関係が壊れてしまうのです。

 

 困った賃貸人は弁護士のもとに相談に向かうのですが、この状態から受任するのはかなり難しいでしょう。仮に受任したとしても、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊された以上は、通常よりも高い立退料を支払って解決せざるを得ない場合も多いことでしょう。

 

 以上のように、弁護士費用を節約しようとしたがために、かえって費用がかかるということもありますので、賃借人の性格なども考慮の上、自分一人でできる案件なのか、それとも最初から弁護士に入ってもらった方がよいのか等について、よく考える必要があります。

 

 

(2)立ち退き交渉のファーストコンタクト

 

 次は具体的な立ち退き交渉のステップです。

建物の場合、期間満了の1年前~6ヶ月前に更新拒絶の通知を送ることになっていますが、いきなり正当事由を羅列した更新拒絶通知を内容証明郵便で送付することは得策ではないでしょう。この方法が得策ではないということは、自分自身を賃借人の立場と仮定したらよく分かるのではないかと思います。

 

 賃借人の退去というデリケートな場面ですから、書面のみよりも面談するなどの方法を取ることが好ましいといえます。

 以上のファーストコンタクトについて、弁護士を付けない場合は賃貸人が自分自身で行うのは当然ですが、弁護士を付ける場合には具体的な話をするのは弁護士であっても、ファーストコンタクト自体は賃貸人本人が行ったほうがよいということです。弁護士がいきなり出ていくと、いきなり弁護士を付けるとは何事かと気を悪くする賃借人もいるからです。弁護士を付ける場合は、その経緯を賃貸人本人から事前に説明すべきであり、趣旨を伝えておくことが大切です。

 

 

(3)立ち退き交渉の期間

 

 立ち退き交渉には非常に時間がかかるケースがあります。そこで、立ち退き交渉の期間を最初に設定し、その期間内に合意ができなければ訴訟提起に切り替えることが大切です。

 

 ところで、任意の交渉と訴訟手続きの比較ですが、まず任意の交渉の方は、上手く行けば早く解決でき、うまく行けば立退料も低く抑えられる点にあります。ただ、あくまでもうまく行けばということなので、下手にやると訴訟手続きよりも時間がかかる可能性があります。

一方で、訴訟手続きの特徴は、①結論が出るまでの期間がおおむね1年間くらいであることと、②裁判官による正当事由充足割合の認定が渋いので、上限に近い額の立退料を支払う可能性があることです。従って、訴訟は、時間と立退料についての予測可能性が比較的立ちやすいという点がメリットです。

 

 以上の特徴を考慮すると、「1~2年程度の期間であれば任意の交渉を行うが、それ以上の期間がかかるのであれば、上限に近い立退料を払ってでも訴訟で解決したい」と考える賃貸人が比較的多いように思われます。もちろん、これについては人によりますので、「上限に近い立退料を支払ってでもよいので、早期解決のためにすぐに訴訟提起したい」という人もいれば、「できる限り立退料は安く抑えたいので、5年かかってでも訴訟は起こさずに交渉する」という人もいるかと思います。これについては個人の価値観の問題ですので、事前によく検討の上、交渉から訴訟に切り替えるまでの期限を決めておくことが大切かと思います。

 

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