自信過剰の話
よく紹介させていただいてますKINZAIに面白い話が掲載されていましたので、紹介させていただきます。
自信過剰の理由
自分の信念や判断に客観的な証拠が示す以上の自信を抱くことを自信過剰といいます。米国では80%以上のドライバーが自分の運転能力は平均以上だと思っている、という調査結果があり、平均は50%を意味しますから30%以上の人は自信過剰ということになります。
この自信過剰の発生原因については2つの立場があり、一つは「自尊心を保持していたい」という動機による説明です。もう一つは認知的要因による説明です。この認知的要因による説明は「自分の努力のほうが他人よりも印象に残るので、その努力に見合った成果を期待するために自信過剰となる」というものと、「成功するために努力したのは事実だから成功は自分の能力のせい、失敗は環境や運が原因と考えやすい」というものがあり、思考プロセスに沿って考えていくと自然に自信過剰となってしまうところが特徴です。
投資における自信過剰の弊害
この自信過剰は株式投資やFX取引などを行う場合に特に問題となります。その問題点について以下に列挙します。
①ゼロサムゲーム:FX取引などの短期の投資は基本的にゼロサムゲームであり、必ず勝者と敗者がいます。ここでポーカーの第一法則「テーブルを見回して、誰がカモにされているかが分からないなら、たぶん自分がカモにされているのだ」を思い出しましょう。
②コントロール幻想:気の弱い人でも、車を運転すると車を支配したような気分になり、気が大きくなりやすいと言われています。最近問題になっている「あおり運転」にはこのコントロール幻想が潜んでいるかもしれません。
③知識幻想:株式投資のように予測そのものが難しい仕事では、利便性の向上が成果の向上に直接結びつくとは限りません。ネット上のさまざまな情報にアクセスできるネット投資家は情報の量に比例して自信を深めますが、実際の判断の正確性は思ったほどには向上しないことが多いです。
④サンクコスト効果:かなりの時間をデータ収集に費やす投資家は、それだけ時間と労力をつぎ込んだのだからそのデータは必ず役に立つはずだと考えてしまいます。
➄認知的不協和:時間をかけて収集した役に立つはずのデータを実際の取引に使わないとしたらそれは理屈に合いません。それで取引に没頭してしまうのです。
⑥自己責任バイアス:取引がうまくいった場合は自分の能力のおかげだとし、失敗した場合は運のせいにすることで、自分のプライドは守られます。
⑦小さい確率の過大評価:宝くじ購入者は、その投資の平均リターンがマイナスであっても苦にしません。宝くじに当たる場合のように、儲かる場合の非常に小さな確率は過大評価されるのです。
自信過剰の人類史的意義
でも、この自信過剰にも存在意義はあります。ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンは「楽観主義バイアスは人間として極めて自然であり、そうでなければうつ病と診断されてしまう」と述べていますし、カーネマンの同僚のトヴェルスキーは「この種の自信過剰は、たぶん、人間に本来的に備わっていると思われる」と自信過剰の人類史的意義を強調しています。
しかし、人は失敗からさまざまなことを学習しなければなりません。意思決定プロセスを見直し、必要な修正を加えなければ、同じ過ちを繰り返すからです。ところが、自信過剰な人は自分の意思決定プロセスを修正しようとは考えずに、過去の行動にマッチするように態度(考え方・受け止め方)のほうを修正してしまうのです。
そういえば少し前、高齢者の自動車運転による重大事故が問題になっていましたが、冒頭に述べた運転能力に関する自信過剰の結果を考えると、なかなか根深い問題といえるかもしれません。
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