身寄りない人トラブル多発 贈与契約無効に
身寄りのない高齢者らを対象としたサポート事業を巡り、契約トラブルが相次いでいます。
「おひとりさま社会」を迎え、専門家は利用者に慎重な事業所選びを促しています。
2022年の国民生活基礎調査によると、65歳以上の高齢者のうち1人暮らしは2割を超え、2007年の2倍ほどになっています。
このような状況の中で、施設入所などの際の身元保証や生活支援、遺品管理といった死後の手続きなど幅広い事務を担うサポート事業への需要が高まっています。
一方、国民生活センターには「内容を理解できず高額契約をしてしまった」などの相談が寄せられており、消費者庁によると、2021年には100件の相談があったそうです。訴訟に至ることもあるようです。
名古屋高裁は2022年3月、本人の死後に財産を身元保証事業者に贈与する契約が、「合理的な理由もなく財産を譲渡させ、暴利行為にあたる。公序良俗に反して無効」とする判断を示しています。
トラブルが相次ぐ背景には、監督官庁や規制する法令がないことが挙げられています。
総務省は2023年8月、「利用者の安心確保と事業の健全な発展が必要」として、厚生労働省や消費者庁に改善を要請しています。
政府は契約ルールを定めたガイドラインの取りまとめを急いでいます。
淑徳大の結城教授(社会福祉学)は、サポート事業に関わる業者は玉石混合の状態にあると指摘しています。
「介護福祉士など専門職がいて、実績があるかどうかで業者の質はある程度は分かる」とした上で、「独りで不安だからこそ身元保証業者に頼るのだが、近所の人や親族など相談相手がいればトラブルに遭うリスクを低減できる」と話されています。
国や業者らには「登録制度やルール作りが急務。優良な業者もいるので業界団体などの設立も望ましい」。
《「筆跡違う」贈与契約無効の事件内容》
身寄りのない高齢者らの身元保証を請け負う名古屋市内のNPO法人が、同市内の90歳と74歳の姉弟と交わした死亡後の贈与契約について、親族が「署名は自筆でない」として契約無効の確認を求めた訴訟の判決が名古屋地裁であり、「契約は無効」と親族の訴えを認めた。
判決によると、2022年8月、「私は全財産をNPO法人に相続させる」と記載され、姉弟がそれぞれ本人名義で署名、押印した遺言書が作成されました。死亡と同時に全財産の所有権がNPO法人に移る死因贈与契約書も、本人名義の署名でそれぞれ作成されていました。
櫻井裁判官は判決理由で、姉が死亡2ヵ月前、入院先で記した治療に関する同意書の署名は、平仮名で文字が大きく乱れていると指摘しました。
一方、死亡4日前に作成された遺言書と契約書の署名は一定の整った体裁で「筆跡が大きく異なる。自己の氏名を漢字で明瞭に署名できる状態にあったともいえないとし、契約を無効としました。
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